スポーツ選手たるもの、良く眠らなければいけません。
それは選手自身も意識していることですし、休息の重要性も理解しています。
しかし、長時間にも及ぶ練習や、文化や風習を継続するが故に、学生運動部などにも適切な量の睡眠がとれていないということが、しばしば見受けられます。
スポーツと睡眠の関係性を語るうえでは外せないこのスタンフォード大学の研究について解説したいと思います。
睡眠を増やすと、スポーツパフォーマンスが上がる?
10人のバスケットボール部の選手(平均年齢は19.4歳)を10時間ベッドに拘束したスタンフォード大学の研究があります。一定期間普段より長い時間ベッドに拘束し、普段より多めの睡眠をとってもらうように促し、日中にスポーツテスト(80m走、フリースロー、3ポイントシュート)を行なうと、実験開始後は変化が出ませんでしたが、約1.5カ月後、全ての成績が向上しました。
80m走=平均0.7秒速くなった。
The Effects of Sleep Extension on the Athletic Performance of Collegiate Basketball Players
フリースロー成功回数=平均0.9本成功回数が上がった。
3ポイントシュート=平均1.4本成功回数が上がった。
この研究結果は、睡眠時間を延ばすことで運動能力が向上したことを示し、睡眠の大切さをスポーツ選手やアスリート学生に伝えるにはよく例に出されます。
1.5か月間の間にスキルが向上したとも考えられますが、実験終了後、実験前の睡眠時間に戻したところスポーツテストの結果は実験前の結果に戻ってしまったのです。ここからスキルアップというよりかは、睡眠をしっかりととることで運動能力が向上したということがわかります。
睡眠不足だった可能性がある運動部の学生たち
この研究に参加した被験者の普段の睡眠時間は約6時間から9時間(主観的)でした。睡眠時間を延長したことで成績が向上したことを考えると、被験者が睡眠不足の状態だったという可能性も考えられます。
またポイントは、成績向上はすぐに出た結果ではなく、1.5カ月続けた後の結果ということです。睡眠不足の状態を解消し、成績向上に繋げるのには1カ月以上かかったということになります。それだけ睡眠不足というのは解消することが大変ですので、これを借金返済に例えて「睡眠負債」と呼ぶこともあります。
選手はもちろんのこと、指導者にできること
この結果からスポーツの成績向上には睡眠が大切ということがわかります。では選手と指導者はこの研究結果を踏まえてどんなことを意識すればいいのでしょうか。
選手=コンディショニングを考えてしっかり眠ろう
スポーツ選手に然り、アスリート学生に然り様々な誘惑がある中で、どれだけ自分の身体の状態と向き合えるかが大切です。また、スポーツをする習慣がない人に比べると多くの睡眠が必要になります。スポーツを行なう習慣がある中で身体的負荷や精神的ストレスが大きいため、眠ろうとしても眠れないことがあります。ルーティンワークなどを取り入れて、眠れないという状態を無くせるような取り組みをする良いでしょう。
指導者=睡眠を理解し、選手に促そう
練習こそ質にこだわり、しっかりと休息のとれる環境を提供しましょう。アスリート学生の中には、通常の授業に加えて長い部活動の練習時間により睡眠時間が圧迫されているケースがあります。成長期の睡眠は身体的成長や精神的成長にとても重要です。指導者が理解することで適切な睡眠が得られる環境を提供できるようにしましょう。
まとめ
・睡眠で運動パフォーマンスは向上する。
・睡眠不足がある場合、解消するのに時間がかかる。
・選手も指導者も、睡眠の重要性を認識することが大切。
参考文献:The Effects of Sleep Extension on the Athletic Performance of Collegiate Basketball Players
Cheri D. Mah, MS,1 Kenneth E. Mah, MD, MS,1 Eric J. Kezirian, MD, MPH,2 and William C. Dement, MD, PhD1
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