睡眠不足が子どもの成績を下げる?学力向上のカギは「勉強量」より「眠りの質」だった

「うちの子、塾にも通わせているし、通信教育もやらせている。なのに、なかなか成績が上がらない……」

そう悩んでいる保護者の方は、少なくないのではないでしょうか。周囲の子がどんどん先に進んでいくように見えると、「もっと勉強させなければ」と焦る気持ちは当然です。テストの点数や受験のことを考えると、とにかく勉強量を増やすことが正解のように思えてきます。

しかし、ここで一つ、見落とされがちな大切なことがあります。それは「お子さん、十分に眠れていますか?」ということです。

実は、世界的に子どもの慢性的な睡眠不足が問題視されています。子どもの平均睡眠時間は少しずつですが着実に減り続けているという報告があり、睡眠不足が学力低下に直結するという研究結果が、国際的な共同研究によって明らかにされています。

この記事では、上海交通大学・ノースウェスタン大学・ジョンズホプキンス大学の共同研究チームが、約2万人の子どもを対象に行った大規模研究の内容をもとに、「睡眠」と「学力」の関係をわかりやすく解説します。勉強量を増やすことだけに目を向けていた方にとって、きっと新しい視点になるはずです。

約2万人の子どもを調べてわかった「睡眠不足」の深刻な実態

推奨される睡眠時間を確保できている子どもは、たった2割

この研究では、中国8都市の小学校55校に通う5歳から12歳の子ども20,778人を対象に、睡眠の実態が調べられました。その結果、子どもたちの平均睡眠時間は約9時間20分。一見、十分に思えるかもしれませんが、この年齢の子どもに推奨される睡眠時間は「10時間以上」です。

推奨される10時間以上の睡眠がとれていた子どもは、全体のわずか約22%にとどまりました。一方、明らかに睡眠が足りていない「9時間未満」の子どもは約38%にのぼっています。つまり、3人に1人以上が慢性的な睡眠不足の状態にあるということです。

子どもの6割以上が「日中に眠気」を感じている

さらに注目すべきは、子どもたちの日中の眠気です。「授業中や日中に眠くなることがある」と答えた子どもは、全体の約64%にのぼりました。そのうち約27%は「頻繁に眠くなる」と回答しています。欧米の同様の調査では、日中に眠気を感じる子どもの割合は15〜37%程度と報告されており、東アジアの子どもたちの眠気がいかに深刻であるかがわかります。

「教育熱心な家庭」ほど、子どもの睡眠時間が短い傾向

興味深いことに、都市部に住む子どもや、家庭の収入が高い家庭、親の学歴が高い家庭ほど、子どもの睡眠時間が短い傾向が見られました。これは、教育への関心が高い家庭ほど、子どもに勉強をさせるために睡眠時間を削っている可能性を示しています。まさに「一生懸命やっているのに、逆効果になっている」という状況が、データでも裏付けられているのです。

5年間の追跡調査で判明──「日中の眠気」が成績を下げる

眠気がある子どもは、注意力・学習意欲・成績のすべてが低下

研究チームは、上海の小学1年生818人を5年間にわたって追跡し、睡眠の状態と学校での成績との関連を調べました。担任の先生が、子どもたちの「注意力」「学習意欲」「学業成績」「友人関係」の4つの面から評価を行いました。

その結果、「頻繁に日中の眠気がある」子どもは、眠気がない子どもと比べて、注意力の低下リスクが約1.14倍、学習意欲の低下リスクが約1.11倍、そして学業成績の低下リスクが約1.18倍高いことがわかりました。また、睡眠時間が9時間未満の子どもも、成績低下のリスクが約1.20倍に上がっていました。

「何時間寝たか」よりも「日中に眠いかどうか」がカギだった

この研究で特に重要なポイントは、「睡眠の長さ」よりも「日中の眠気」のほうが、学校での成績との関連が一貫して強かったという発見です。つまり、「何時間寝ているか」という数字だけでは不十分で、「しっかり眠れた結果、日中に頭がすっきりしているかどうか」が学力に直結するということです。

たとえ8時間眠っていても、寝る前にスマホやゲームで脳が興奮していたり、寝室が明るかったりすれば、眠りの質は低くなります。その結果、朝起きてもぼんやりして授業に集中できない。こうした状態が続けば、どれだけ塾に通っても、勉強の効果は半減してしまいます。

「勉強のために睡眠を削る」が招く悪循環

研究チームが指摘しているのは、「勉強のために睡眠を削ること」が引き起こす悪循環です。成績を上げたくて睡眠を削って勉強する。すると日中に眠くなる。注意力と学習意欲が下がる。そして成績がかえって落ちる──。この流れが、5年間にわたるデータではっきりと示されました。

「寝る間も惜しんで勉強する」ことが美徳とされがちな文化のなかで、この研究結果は非常に大きな意味を持っています。がんばって勉強している子どもに対して、「もっと頑張れ」ではなく「しっかり寝よう」と声をかけることが、実は一番の学力向上策かもしれないのです。

学校の始業時間を遅らせたら、子どもの眠気が改善した

始業を30分遅らせるだけで、睡眠時間が約25分増加

この研究では、上海の小学校6校を対象に、始業時間を遅らせる実験も行われました。ある学校では始業時間を30分遅く(7時30分から8時へ)、別の学校では60分遅く(7時30分から8時30分へ)に変更し、2年間の経過を追いました。

その結果、始業を30分遅らせた学校では子どもの平均睡眠時間が約25分増加し、日中に頻繁に眠くなると答えた子どもの割合が約9%減少しました。60分遅らせた学校ではさらに効果が大きく、睡眠時間が約27分増えています。一方で、始業時間を変えなかった学校では、逆に睡眠時間が減り、日中の眠気が増加していました。

制度だけに頼らず、家庭の取り組みも不可欠

ただし、始業時間を遅らせても、推奨される睡眠時間を達成できた子どもは少数にとどまりました。約半数が依然として日中に眠気を感じていたのです。始業が遅くなると就寝時間も一緒に遅くなる傾向があり、増えた睡眠時間は繰り下げた分の半分程度でした。

この結果は、学校の制度変更だけに頼るのでは限界があることを示しています。家庭での就寝時間の管理や、宿題の量の見直し、寝る前の過ごし方の改善など、複合的な取り組みが必要です。制度が変わるのを待つのではなく、まずは家庭でできることから始めることが大切ではないでしょうか。

今日からできる、睡眠と学力を両立させる具体策

「日中に眠そうにしていないか?」──最初にチェックすべきサイン

ここまでの研究結果を踏まえて、家庭で実際に何ができるかを考えてみましょう。まず大切なのは、お子さんの睡眠の状態に気づくことです。睡眠時間を毎日正確に計るのは難しいものですが、日常のサインを見ることならできます。「朝なかなか起きられない」「授業中にぼーっとしていると先生に言われた」「帰宅後すぐにうとうとする」──こうしたサインがあれば、睡眠の量や質に問題がある可能性があります。

研究が示したように、学力と最も強く関連していたのは「日中の眠気」でした。成績が伸び悩んでいるとき、塾を増やしたり教材を変えたりする前に、まずこの「眠気のサイン」に目を向けてみてください。

夜のダラダラ勉強をやめて、集中と睡眠にメリハリを

お子さんの睡眠不足に気づいたとき、「でも勉強時間を減らすわけにはいかない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、夜遅くまでダラダラと机に向かっている時間は、本当に「効果のある勉強時間」になっているでしょうか。

大切なのは、勉強の「量」ではなく「メリハリ」です。たとえば、夕方から夜にかけての2〜3時間に集中して取り組み、決まった時間に寝る。翌日の授業に頭がすっきりした状態で臨めれば、授業中の理解度が上がり、家での復習も短時間で済むようになります。受験を控えたお子さんであればなおさら、「睡眠は勉強の一部」と捉える視点が重要です。

家庭でできる「眠りの質」を高める工夫

睡眠の質を高めるために、家庭で今日からできることがあります。まず、就寝の1時間前にはスマートフォンやタブレットの使用をやめること。画面から出るブルーライトが眠りを促すホルモンの分泌を妨げることは、広く知られています。また、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる「規則正しい睡眠リズム」をつくることも効果的です。休日だけ遅くまで寝ていると、かえって体内時計が乱れてしまいます。

宿題の量が多すぎて就寝時間が遅くなっている場合は、学校や塾の先生に相談してみるのも一つの方法です。「勉強を減らす=サボる」ではなく、「睡眠を確保する=学力を守る」という視点に立つことが、長い目で見たときにお子さんの力を最大限に引き出す道です。

まとめ──「十分な睡眠」こそが学力向上の土台

この記事でご紹介した研究は、約2万人の子どもを対象とした大規模な国際共同研究に基づいています。そこから見えてきたのは、子どもの3人に1人以上が慢性的な睡眠不足であること、6割以上が日中に眠気を感じていること、そして日中の眠気がある子どもは注意力・学習意欲・成績のすべてが低下する傾向にあるということです。睡眠を削って勉強時間を増やしても、成績はかえって下がってしまう──この事実は、多くの保護者にとって意外に感じられるかもしれません。

一般的に広く知られているように、子どもの脳は寝ている間に記憶を整理し、学んだことを定着させています。十分な睡眠は、学力を支える土台そのものです。

成績が思うように上がらないとき、「もっと勉強を」と考えるのは自然なことです。でも、その前にぜひ一度、「うちの子、ちゃんと眠れているかな?」と問いかけてみてください。その小さな問いかけが、お子さんの学力向上への新しい一歩になるかもしれません。

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参考文献
1)Li S, Arguelles L, Jiang F, Chen W, Jin X, Yan C, Tian Y, Hong X, Qian C, Zhang J, Wang X, Shen X. Sleep, School Performance, and a School-Based Intervention among School-Aged Children: A Sleep Series Study in China. PLoS ONE. 2013;8(7):e67928. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0067928