朝ごはんを抜くと子どもの体内時計が狂う?

思春期の子を持つ親が今すぐ知っておきたい、朝食と体のリズムの深い関係

「うちの子、朝ごはんを食べないんだけど…まあ、時間もないし、仕方ないかな」

そう感じている保護者の方は、少なくないのではないでしょうか。中学生・高校生になると部活や塾、スマートフォンなどで夜更かしが増え、朝は起きるだけで精いっぱい。朝食どころではない、という家庭の事情は十分に理解できます。

でも、「朝ごはんを食べないのは、せいぜいお腹が空くだけ」と思っているとしたら、少し立ち止まって読んでみてください。

広島大学・筑波大学などの研究チームが行った実験では、たった6日間朝食を抜いただけで、人間の体内時計に関係する体温のリズムが約1時間後ろにズレることが明らかになりました(※)。睡眠時間は変えていないのに、です。

この記事では、その研究結果をもとに、「なぜ朝食が体内時計に影響するのか」「体内時計が乱れると子どもの生活にどんな悪影響が出るのか」「忙しい朝でも取り入れやすい工夫」について、できるだけわかりやすく解説します。

「朝ごはんを抜くだけ」が体内時計を狂わせる。研究から見えてきた事実

6日間の実験でわかったこと

広島大学・筑波大学を中心とした研究チームは、20〜30代の健康な男性10名を対象に、次のような実験を行いました。参加者を2つのグループに分け、一方は朝・昼・晩の3食を、もう一方は昼・晩の2食(朝食なし)を6日間続けてもらいます。どちらも1日に食べるカロリーの合計は同じで、寝る時間・起きる時間も変えませんでした。

その結果、朝食を抜いたグループでは、体の深部体温(体の内側の温度)が上がりにくくなり、体温の高まりが最大になる時刻が平均約42分、つまりおよそ1時間遅れることがわかったのです(※)。

「体温が1時間ズレるって、そんなに大したことじゃないのでは?」と思われるかもしれません。でも、この体温のリズムは、眠気・集中力・代謝など、体のあらゆる働きと連動しています。体温リズムが後ろにズレるということは、体が「まだ夜のモード」のまま朝の活動時間を迎えているような状態なのです。

体内時計とは何か。「体の中のスケジュール帳」とも言える仕組み

私たちの体には、約24時間周期で繰り返される「体内時計」が備わっています。この時計は、朝に光を浴びることで毎日リセットされますが、実は光だけでなく、食事のタイミングも体内時計に影響を与える重要な役割を持っています。

特に「朝ごはん」は、体温のリズムなど、体の各部分にある時計のリズムを整える役割を担っている可能性があることが、今回の研究で示されました。

一方で、今回の研究では、脳の中枢にある時計(メラトニンの分泌リズム)には朝食欠食の影響が見られませんでした。つまり、脳の「本体時計」は変わらないのに、体の「末梢時計」だけがズレてしまうという現象が起きているのです。これは、体の内部でちぐはぐな「時計のズレ」が起きている状態であり、これが長期化するとさまざまな問題につながる可能性があります。

なぜ思春期の子どもほど影響を受けやすいのか

今回の研究の対象者は、朝型か、どちらでもない普通型の健康な成人男性でした。それでも体温リズムの遅延が起きたのです。では、もともと「夜型」になりやすい思春期の中高生ではどうでしょうか。

思春期になると、体の成長とともにメラトニン(眠りを促すホルモン)の分泌時刻が自然と後ろにズレ、夜更かし傾向になりやすいことが生物学的に知られています。そこに朝食欠食が加わると、体内時計の乱れがさらに大きくなる可能性があります。

「夜更かしするから朝ごはんが食べられない」→「朝食を抜くと体内時計がズレる」→「さらに夜型になって夜更かしが悪化する」。この悪循環が静かに進んでいるかもしれません。

体内時計が乱れると、子どもの生活にどんな影響が出る?

日中の眠気と集中力の低下

体温リズムが後ろにズレた「夜のモード」のまま学校に向かうと、午前中は頭がぼんやりしやすく、集中力や判断力が落ちやすい状態が続きます。

「授業中に眠くなる」「1〜2時間目が頭に入らない」という子どもの訴えの背景に、朝食欠食による体内時計の乱れが隠れている可能性があります。成績や学習への集中力に悩んでいる保護者の方にとっては、塾に通わせる前に朝食習慣を整えることが、意外な近道になるかもしれません。

夜更かし・朝寝坊のループに入りやすくなる

体内時計がズレると、夜になっても眠れない・朝になっても眠気が抜けないという状態が続きやすくなります。夜の「眠くなるタイミング」も後ろにずれるため、夜更かしにつながります。

その結果、翌朝はさらに起きられず、朝食を食べる余裕もなくなる。そういった悪循環がより深刻になっていきます。特に長期休暇明けや新学期の時期に「リズムが戻らない」と感じる子どもの場合、この問題が長引いている可能性があります。

長期的な体への懸念

今回の研究は6日間という短い期間の実験でしたが、研究者たちはこれが「最初のほころび」に過ぎない可能性を指摘しています。マウスやラットを使った動物実験では、長期間朝食を抜き続けると、肝臓や脂肪組織などの時計のリズムが乱れ、脂質の合成が増えるなどの代謝への影響が生じることが示されています(※)。

体内時計の乱れが慢性的に続いた場合、代謝の問題や様々な健康上のリスクにつながる可能性があると研究者たちは考えています。今はまだ「元気だから大丈夫」と感じていても、体の内側では少しずつ変化が積み重なっているかもしれません。

「食べたくない・食べられない」朝食欠食の本当の理由

睡眠不足と夜型生活が「食欲ゼロ」を作る

「朝ごはんを食べなさい」と伝えても、「食欲がない」と言われた経験はないでしょうか。実はこれ、子どもの意志が弱いのではなく、体の自然な仕組みによるものです。

睡眠が不足したまま起きると、体の消化機能がまだ動き始めていないため、食欲を感じにくい状態になります。また、夜遅くに食事をする習慣があると、胃の中に食べ物が残っていて朝に空腹感を覚えにくくなります。

つまり、「朝食を食べないから体内時計がズレる」だけでなく、「体内時計がズレているから朝食を食べたくなくなる」という、どちらも影響し合う悪循環が起きているのです。

忙しさ・時間不足が朝食欠食を加速する

日本の若年層の朝食欠食率は高い水準にあります。特に中学・高校への進学後、通学時間や部活・塾などにより生活がハードになると、朝の時間が慢性的に不足しがちです。

保護者自身も朝の準備に追われているなかで、毎日きちんとした朝食を用意するのは容易ではありません。「朝食は食べるべき」とわかっていても、現実的に難しいという状況は珍しくないでしょう。

ここで大切なのは、「完璧な朝食でなくてもよい」という発想の転換です。今回の研究が示唆するように、体内時計へのはたらきかけという観点では、食事の内容の豊かさよりも、「朝に何かを口にする」という行為のタイミングそのものに意味があります。

忙しい朝でも続けられる!朝食習慣を作るための工夫

「食べる量」より「食べるタイミング」を優先する

体内時計のリズムを整えるという意味では、朝食は「量よりもタイミング」が重要です。たとえ少量でも、起きたらできるだけ早めに何かを口にすることが、体内時計への刺激になると考えられています。

忙しい朝には、バナナ1本・ヨーグルト・小さなおにぎり・牛乳・ゆで卵など、準備の手間がかからないものでも十分です。「朝ごはんを作ること」に負担を感じているなら、前夜から用意できるものや、手に取るだけで食べられるものをストックしておくだけでもかまいません。

就寝時間と夜食の習慣を見直す

朝食を食べやすくするためには、前夜の習慣も見直す必要があります。夜遅くの食事や夜食は、翌朝の食欲を大きく奪います。スマートフォンやゲームによる夜更かしが続くと、起床時の体の準備が整わないまま朝を迎えることになります。

「夜10時以降は食べない」「スマートフォンは就寝30分前にはしまう」といったルールを家族で共有することで、朝食を食べやすい状態を整えることができます。体内時計は、夜の過ごし方によっても大きく影響されます。

親子で「体内時計」の話をしてみる

「朝ごはんを食べなさい」と頭ごなしに言っても、思春期の子どもには反発されがちです。それよりも、「朝ごはんを抜くだけで体温リズムが1時間ズレるって知ってる?」と科学的な話として伝えると、子ども自身が「じゃあ食べようかな」と考えるきっかけになることがあります。

子どもは「なぜそうすべきか」の理由を知ると行動が変わりやすいものです。義務や強制ではなく、「自分の体のしくみを知って自分でケアする」という意識を育てることが、習慣化への近道になります。

食卓での短い会話から、子どもの生活習慣を少しずつ整えていく。そんなきっかけとして、この記事が役立てば幸いです。

朝ごはんは「栄養」だけでなく「体内時計のリズムを整える役割」がある

朝食の大切さは昔から言われていますが、その理由のほとんどは「栄養補給」「午前中のパフォーマンス維持」という観点でした。今回ご紹介した研究は、それに加えて「朝食が体内時計の体温リズムを整える役割を担っている可能性がある」という新しい視点を提示しています。

たった6日間の朝食欠食で、体温リズムが約1時間後ろにズレる。これは睡眠時間を変えなくても起きる変化です(※)。朝型か普通型の健康な成人でさえそうなるのですから、夜型になりやすい思春期の子どもへの影響はさらに大きくなる可能性があります。

もちろん、朝食を毎日食べさせることが難しい日もあるでしょう。完璧を目指す必要はありません。でも、「少しでも食べる」という習慣の積み重ねが、子どもの体の内側のリズムを守ることにつながります。

忙しい毎日の中で、まず「バナナ1本から」始めてみませんか。それが、子どもの体内時計を守る小さくても確かな一歩です。

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参考文献
1)Ogata H, Horie M, Kayaba M, et al. Skipping Breakfast for 6 Days Delayed the Circadian Rhythm of the Body Temperature without Altering Clock Gene Expression in Human Leukocytes. Nutrients. 2020; 12(9): 2797.
2)Yoshida C, et al. Nutr Metab. 2012; 9:78. / Shimizu H, et al. PLoS ONE. 2018; 13: e0206669.え