「うちの子、怠け者?」じゃない!思春期の朝寝坊・夜更かしには科学的な理由があった

「何度起こしても起きない」「夜中まで起きていてスマホをいじっている」。思春期のお子さんを持つ親御さんなら、こんな光景に頭を悩ませたことがあるのではないでしょうか。「しっかり寝るように言い聞かせているのに、なぜ言うことを聞かないの?」と叱ってしまうこともあるかもしれません。

しかし実は、思春期の子どもが朝起きられなかったり夜更かしをしてしまうのは、怠けや意志の弱さではなく、体の中で起きている自然な変化が原因であることが、最新の科学研究で明らかになっています。

今回は、オックスフォード大学のRussell G. Foster教授らが2008年に発表した時間生物学の総説論文をもとに、思春期の睡眠リズムの変化について、親御さんにわかりやすく解説します。

人間には「体内時計」が備わっている。その仕組みとは?

体内時計は約24時間周期で動いている

私たちの体には、「体内時計」と呼ばれる精密な仕組みが備わっています。これはざっくり言うと、「いつ眠り、いつ起きるか」を体が自動的に調整する機能のことです。この体内時計は約24時間周期で動いており、朝の光を浴びることでリセットされ、正確な時刻に合わせて調整されています。

Foster教授らの研究によると、人間の体内時計は「社会的な時刻」よりも「太陽の動き(日の出・日の入り)」によって同調していることが、7万人以上を対象にした大規模な調査で明らかになっています。つまり、どれだけ規則正しい生活を心がけても、体内時計は本来、太陽の光に連動して動いているのです。

「朝型」「夜型」は個人差がある。クロノタイプとは

体内時計のリズムは人によって異なり、自然に早起きしやすい「朝型」の人もいれば、夜遅くまで活動的な「夜型」の人もいます。これを専門的には「クロノタイプ(体内時計の個人差)」と呼びます。

重要なのは、このクロノタイプは「生まれつきの性格や怠慢さ」ではなく、体の生物学的な特性だということです。そして、このクロノタイプは年齢とともに変化することが研究でわかっています。

思春期になると体内時計は「自然に」夜型へシフトする

子ども時代は早起き体質、思春期から夜型へ。年齢による変化

Foster教授らの研究が示す最も重要な発見の一つが、「体内時計のリズムは年齢とともに大きく変わる」という事実です。子どもの頃は比較的早起き体質なのに、思春期に入ると体内時計が徐々に「遅れ」始め、夜型へとシフトしていくのです。

この研究では、60,000人以上のヨーロッパ人のデータを分析した結果、体内時計が最も夜型になるのは20〜21歳前後であることが判明しました。思春期から大学生の時期にかけて、体内時計は自然にどんどん夜型になっていきます。これは世界中で見られる普遍的な生物学的変化です。

しかもこの変化は、スマホの使い過ぎや不規則な生活習慣だけが原因ではなく、体の成長プロセスに最初から組み込まれた変化です。つまり、夜眠れなかったり朝起きられなかったりするのは、ある意味「体が正常に発達している証拠」でもあるのです。

男の子と女の子では夜型のピークが違う

さらに興味深いことに、この夜型シフトの終わりのタイミングは男女で異なります。研究によると、女性は平均19.5歳ごろに夜型のピークを迎え、その後は朝型へと戻り始めます。一方、男性は平均21歳ごろまで夜型傾向が続き、その後ゆっくりと朝型へ戻っていきます。

これは「男の子の方が女の子より長く夜更かし体質が続く」ということを意味しており、性別による睡眠の違いは単なる個性ではなく、体の成熟プロセスと深く関わっているのです。

「社会的時差ぼけ」。学校の時間と体内時計がぶつかっている

平日の目覚ましと休日の寝坊。その差が体へのダメージになる

体内時計が夜型にシフトした思春期の子どもたちが最も苦しむのが、「平日の登校時間」との戦いです。体の自然なリズムでは夜遅くに眠くなり、朝遅くまで眠り続けたいのに、学校の時間割のために早起きを強いられる。この状況を、研究者たちは「社会的時差ぼけ」と呼んでいます。

海外旅行で時差ぼけを経験したことはありますか?飛行機で遠くへ飛んだあとの、あのダルさや頭がぼーっとする感覚。社会的時差ぼけとは、毎週繰り返される「プチ時差ぼけ」のようなものです。体内時計のリズムと実際の生活スケジュールのズレが大きいほど、心身への影響も大きくなります。

Foster教授らの研究では、平日と休日の睡眠時間のズレが4時間以上ある人は、ズレがほとんどない人と比べて喫煙率が約60%にまで達することが示されています(ズレがない人は約10%)。これは、睡眠リズムの乱れが生活習慣全般に悪影響を及ぼすことを示す一例です。

慢性的な睡眠不足は子どもの心と体の発達を妨げる

体内時計と社会スケジュールのズレが繰り返されると、子どもは慢性的な睡眠不足に陥りやすくなります。夜型体質の子ほど、学校のある平日は体が求める睡眠量を確保できず、休日に「寝だめ」をして補おうとします。しかしこの寝だめ自体が体内時計のリズムをさらに乱す悪循環を生んでしまいます。

同論文では、体内時計に反した生活が、注意力や記憶力の低下、反応速度の遅れ、やる気の減退、うつ症状、肥満のリスク増加など、さまざまな心身の問題に結びつくことも指摘されています。

塾や習い事に一生懸命通わせているのに成績が伸びない、という場合、じつは睡眠不足による学習効率の低下が影響している可能性もあります。子どもの学習パフォーマンスを最大化するためには、睡眠環境を整えることが最も基本的で効果的な投資かもしれません。

スマホ・ゲームよりも先に知るべきこと。夜の光が体内時計を狂わせる仕組み

体内時計は「光」によってリセットされる

体内時計が日の出・日の入りに同調するということは、「光」が体内時計の最大のリセット要因であることを意味します。朝の太陽光を目で感じると体内時計がリセットされ、「今日が始まった」という信号が体中に送られます。そして朝の光から一定時間後に眠くなるように設定されるのです。

逆に言えば、夜に強い光を浴びると「まだ昼間だ」と体が勘違いし、体内時計が遅れてしまいます。スマホやタブレット、ゲーム機の画面から出るブルーライトは、脳が「夜になった」と認識するのを妨げるとされています。もともと夜型にシフトしている思春期の体内時計が、夜間のスマホ使用によってさらに後ろにズレていく。これが「夜更かし」の正体の一つです。

親にできる環境づくり。叱るより整える

「早く寝なさい!」と叱ることよりも、子どもが自然に眠れる環境を整える方が、実は効果的です。体内時計が夜型にシフトしているこの時期、無理やり早起きを強制することは難しい面もありますが、以下のような環境づくりは体内時計のリズムを整えるうえで有効です。

まず、朝目覚めたらカーテンを開けて朝の光を浴びる習慣をつけることです。朝の日差しは体内時計を早める最も自然なリセット方法です。次に、就寝前にスマホや画面の明るさを落とすことを心がけましょう。夜間の光刺激を減らすだけで、自然な眠気が訪れやすくなります。また、寝る時間・起きる時間を毎日できるだけ一定にすることも重要です。平日と休日の睡眠時間のズレを小さく抑えることが、体内時計の安定につながります。

思春期の朝寝坊・夜更かしは「理解」と「サポート」で向き合おう

朝起きられないわが子を責める前に

今回ご紹介した研究は、「思春期の夜更かし・朝寝坊は怠慢ではなく、体の成長プロセスに組み込まれた自然な変化である」という科学的事実を示しています。子どもを叱ってしまいたくなる気持ちは十分わかります。でも、まずその変化が「生物学的に正常なこと」だと知ることが、お互いの関係をより良くする第一歩になるはずです。

一方で、「体がそうなっているから仕方ない」と放任するのも問題です。夜型傾向は自然なものですが、スマホの夜間使用や不規則な生活がそれをさらに悪化させることも事実です。体内時計のリズムを過度に乱さないための生活環境を、親子で一緒に考えていくことが大切です。

睡眠は「健康の土台」。子どもの将来を守るために今できること

Foster教授らの研究は、体内時計に反した生活リズムが、注意力・記憶力の低下やうつ症状・肥満など、心身にわたる幅広い健康問題と関連していることを指摘しています。思春期という体と心が急速に成長するこの時期こそ、睡眠の質と量を守ることが、子どもの将来の健康に大きく影響します。

塾代や習い事にお金をかけることも大切ですが、十分な睡眠時間を確保することは、コストゼロで実践できる最高の「子どもへの投資」です。今夜から、子どもの体内時計に寄り添った生活環境を少しずつ整えてみてはいかがでしょうか。

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参考文献
1)Foster, R.G. & Roenneberg, T. (2008). Human Responses to the Geophysical Daily, Annual and Lunar Cycles. Current Biology, 18(17), R784–R794.