【注意!】退勤中の電車で居眠りする人が、良い睡眠を取れない理由を、科学的根拠から解説

仕事が終わり、帰りの電車に乗ると帰宅ラッシュに巻き込まれて吊革につかまりながら
最寄り駅までうとうと…。
ふと目の前を見ると同じような仕事に疲れたサラリーマンが寝ている…。
こんな日常を過ごしていませんか?

「座って少しでも良いから寝たいな…。」そう思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
実は。この帰宅ラッシュの時間帯に眠っている方は、良い睡眠がとれていない可能性があります。
その実態を注意点を踏まえながら見ていきましょう。

良く電車の中で寝る日本人

海外の方が日本に遊びに来ると、その電車の光景を見てびっくりするそうです。
日本人は海外に比べても、電車の中で寝ている割合が多いのです。それは日本の治安が良いから眠っていても安全ということももちろんありますが、それ以上に日本人は睡眠不足の状態に陥っているのです。

普段電車に乗っても当たり前のように寝ている人を見かけますが、これは睡眠不足という、当たり前ではなく大切な健康に関わる問題の現れと捉えなければいけません。

通勤時間が長いと睡眠の質が落ちる

この通勤時間そのものが睡眠と関連しているという報告があります。2021年、日本の日勤者1.8万人以上を対象とした研究では、通勤時間が長いほど睡眠時間が短いと報告されており、2022年、長時間労働が睡眠時間の短縮・不規則食事に繋がり、メンタル不調という経路を示している報告でも、通勤時間の削減も職域対策の一つとして提言されています。※2.3)

厚生労働省が発表している国民健康・栄養調査※4)ではと、働き世代で慢性的な睡眠不足が目立っています。1日の平均睡眠時間が6時間未満と答えた人の割合は、男性の30代〜50代、女性の40代〜50代が40%を超えていると報告があります。この睡眠不足は社会的な背景も含まれていて、解決はそう簡単ではありません。特に仕事の忙しさに加えて、家事や育児、介護なども睡眠時間を減少させる要因と考えられ、必然的に睡眠不足が作られている状態が考えられます。

通勤時間の長さが「不眠」とも関連?

ここまでは通勤時間が長いと睡眠時間が短縮されてしまうことについて言及しましたが、実はこの通勤時間の長さが「不眠」に繋がってしまう可能性があり、まさにそれがタイトルでもある「退勤中に寝てはいけない理由」となります。

通勤時間が長いと眠れない先生たち

日本の教員を対象とした2020年の報告によると不眠症と長い通勤時間が優位に関連があり、通勤が睡眠問題のリスクと示唆しています。考えられるポイントとしては、通勤時間が長い分そこで睡眠をとってしまい、特に退勤中の場合は夜間の主睡眠まで退勤中の電車内で補ってしまうことです。※5)

最寄えきのギリギリになって起きることで慌てて電車から降り、家に着いて食事や入浴など済ませてもあまり眠気がやって来ない。最終的にだらだらスマホで時間を潰したら「もうこんな時間…。」というような悪循環に繋がってしまいます。

睡眠は日中の活動で睡眠圧と呼ばれるパワーを脳内に溜め込み、この圧が溜まるほど眠気が訪れ、睡眠をとることでリセットされる仕組みがあります。鹿おどしのようなイメージがわかりやすいと思います。水がゆっくり溜まっていき、限界を迎えたら竹が傾き水を流すのと同じ仕組みです。これが帰りの電車で少し眠ってしまうことで、本来の眠りたい時間の前に水を軽く流してしまうような状態になってしまいます。そして十分な水が溜まらず、眠りたいのに眠れない「不眠」となってしまいます。

昼間の睡眠が就床時刻に近いほど、睡眠の質が低下するという報告もあり、電車の中、特に帰りの電車でに眠らないように注意が必要です。

夜のうたた寝は深い睡眠を減らす

ヒトの眠りは基本的に浅い睡眠と深い睡眠を繰り返して行なわれています。そのうちの深い睡眠は「徐波睡眠」と呼ばれ、成長ホルモンの分泌などに関わる睡眠の質を語るうえで重要な睡眠ステージです。実はこの深い睡眠は夜にうたた寝をしてしまうと割合が減ってしまうことがわかっています。
うたた寝を含めた仮眠をとるタイミングは、なるべく早い時間に行なわなければ主睡眠と呼ばれる夜の長い睡眠にマイナスの影響を与えてしまいます。仕事帰りの時間に寝るのは、よほどの早上がりではない限り夜の睡眠に影響を及ぼしてしまい、徐波睡眠の割合を減らしてしまうことで睡眠の質を下げてしまう恐れがあります。

電車のゆらぎが眠気を誘う

電車の中で立って寝ている人は、相当な睡眠不足の状態であるといえます。しかし、座っている状態だと、なんとなくうとうとしてしまうことはありませんか?これには睡眠不足に加えて、眠気を促す揺らぎの効果というものがあります。

1/fゆらぎ効果

1/fゆらぎ効果とは、眠気を促すゆらぎ効果のことを言います。具体的には人間の本来持っているリズムと同じようなゆらぎで、副交感神経というリラックスするための自律神経が優位になり、お休みモードへと切り替わりやすくなります。
このゆらぎは心臓の行動や呼吸などのリズムと似ていて、電車の揺れがこの効果を発揮するため眠気を促すという仕組みが隠れています。

いくつかのゆらぎと入眠促進の研究も

サンプル数は小さいですが、この1/fゆらぎの振動を与えることにより副交感神経の亢進がはかられ、入眠時間の短縮に繋がった報告があります。また、ピンクノイズを用いた研究では、入眠時間が10分程度短縮されたという研究もあります。これらが通常の不眠を助けてくれる利用方法となれば素晴らしいものですが、眠ってはいけない時間帯に助長されてしまうと、本来は眠りたくないのに眠ってしまうという逆の働きをしてしまいます。※6.7)

睡眠禁止帯には注意

この「眠ってはいけない時間帯」とは、夜の主睡眠に悪影響を及ぼさないためにこの記事では定義していますが、本来就寝2〜4時間前の時間帯は睡眠禁止帯(覚醒維持帯)とも呼ばれ、体内時計が覚醒を最も強く押し上げて眠気があまり来ない時間帯のことを指しており、メラトニンが分泌開始されるまでは寝付きにくい時間帯のことを言います。この時間帯に眠気が強い時点で根本的な睡眠不足の可能性が高いことも考えられます。また、この時間帯に眠ってしまうことが体内時計の乱れにも繋がってしまうことがあります。

良い睡眠をとるために!今日からできる改善策3選!

ここまでは電車の中で眠るリスクや原因を、様々な研究を用いて紹介しました。
とはいっても、「電車の中で気づいたら眠っている。」「疲れていてそれどころではない。」という方もいるかと思います。
少しでも良い睡眠習慣を送れるように、3つほどアドバイスを記載します。どれも実践すること自体は簡単なので、今日からぜひ意識してみてください。

帰りの電車より行きの電車

睡眠不足の状態に電車のゆらぎが加わってしまうと、うたた寝が我慢できないということもあるかと思います。もし電車の中で寝る場合は帰りの電車ではなく、行きの電車で寝るようにしましょう。行きの電車の睡眠は夜間の主睡眠までの時間は長く、そこまで影響が強いものではないと考えられます。しかし帰りの電車は夜間の主睡眠に影響してしまうので、なるべく我慢できると主睡眠の質の向上が期待できます。注意するべきは、電車の中での睡眠は仮眠程度で、普段の睡眠時間を十分に補えるものではないということだけは認識しておきましょう。

通勤習慣に少し変化を加える

電車の中で眠ってしまう事象そのものを解決したい場合は、普段の習慣に少し変化を加えることをしてみると良いでしょう。一定のリズムや同じ環境で行動をすると、それに合わせて眠気が訪れることも考えられます。「この車両でこの時間に座れたらゆっくりできるから眠る。」という一連のサイクルが習慣づいている場合もあります。
少しの変化から始めてみると取り組みやすいので、一度車両を変えてみる、途中の駅までは頑張って座らないようにする。というような工夫をしてみるのも、帰りの電車でうたた寝することを防げる可能性があります。

根本的な睡眠問題を解決する

何度も述べているように、電車の中で強い眠気に襲われてしまい、眠ってしまうことがある場合は睡眠そのものに問題がある可能性が高いです。まずは必要な睡眠時間が十分に取れているかを確認しましょう。その上で睡眠時間が十分にも関わらず、なかなか改善されない場合はその他の原因が隠れているかもしれません。特にいびきなど注意されることがある場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)といった疾病が隠れていることもあります。専門機関に相談することも視野に入れましょう。

睡眠課題を解決して、快適な通勤ライフを!

通勤電車での「うたた寝」は、多くの日本人にとって日常的な光景です。しかし、この習慣は単なる疲労ではなく、慢性的な睡眠不足のサインかもしれません。通勤時間が長いほど睡眠時間が短くなる傾向があり、特に帰宅時のうたた寝は、夜の睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。

電車でのうたた寝が問題なのは、睡眠の質を低下させてしまうからです。睡眠は、日中の活動で溜まった眠気の「パワー(睡眠圧)」を夜間にリセットする仕組みで成り立っています。帰りの電車で少し眠ってしまうと、この睡眠圧が中途半端に放出され、本来寝るべき時間帯になかなか寝付けない「不眠」に繋がります。また、夜間のうたた寝は、成長ホルモンの分泌に関わる深い睡眠(徐波睡眠)の割合を減らしてしまうこともわかっています。電車特有の**「1/fゆらぎ」**も眠気を誘う一因です。この心地よい揺れはリラックス効果がある一方で、夜の主睡眠に悪影響を及ぼす時間帯に眠気を助長してしまう危険性があります。

健康な睡眠習慣を取り戻すためには、帰りの電車では眠らないというポイントを意識しつつ、普段の睡眠不足が解消できるような生活習慣を取り戻しましょう!

参考文献
伊藤和弘・佐田節子(著)三島和夫(監修) (2017). 疲れをとるなら帰りの電車で寝るのをやめなさい. 日経BP社
2)Kakamu et al., 2021, open access
3)Watanabe et al., 2022, Int J Environ Res Public Health
4)厚生労働省 2019 令和元年国民健康・栄養調査報告
5)Hori et al.2020, Sleep Medicine
6)北堂真子・三原泉. 1990 松下電工技報
7)Kawada T, Suzuki S. 1993.. Ind Health