中高生の睡眠不足がメンタルヘルスに影響する?気分と睡眠の密接な関係について

お子さんの「気分の浮き沈み」、気になっていませんか?

「最近うちの子、なんだかイライラしていることが多い気がする」「休みの日はお昼過ぎまで寝ていて、あまり外にも出たがらない」――そんなふうに感じている保護者の方は少なくないのではないでしょうか。

思春期のお子さんを育てていると、ある程度の気分の波は「この年頃だから仕方ない」と思いがちです。実際、思春期は感情の動きが大きくなる発達段階であり、ちょっとしたことで怒ったり落ち込んだりすること自体は珍しくありません。

しかし、その「気分の浮き沈み」の裏側に、もしかすると「睡眠不足」が隠れているかもしれないとしたら、少し見方が変わるのではないでしょうか。

休日に寝てばかり…これって普通?

平日は朝早く起きて学校に行くけれど、休日になるとお昼近くまで起きてこない。こうした光景は多くの家庭で見られますが、実はこれは「平日に足りなかった睡眠を取り戻そうとしている」サインかもしれません。

一般的に、思春期の体は体内時計の変化によって夜型へとシフトしやすくなると言われています。つまり、夜なかなか眠くならず、朝はなかなか起きられないという状態が、生物学的に自然に起きやすいのです。それにもかかわらず学校の始業時間は変わらないため、結果として平日は慢性的に睡眠が足りない状態が続きやすくなります。

思春期の脳はまだ発達の途中にある

思春期は、脳のなかでも特に感情のコントロールに関わる部分が大きく発達する時期です。この発達が進む途中の時期だからこそ、感情の揺れが大きくなりやすく、大人と同じようにはいかないことがたくさんあります。そうした発達途上の脳にとって、睡眠は非常に大切な回復と成長の時間です。

では、その睡眠が足りなくなると、思春期の気分や感情には実際にどのような影響が出るのでしょうか。

睡眠不足がもたらす「気分への影響」──研究が明らかにしたこと

「睡眠が足りないと気分が悪くなる」というのは、大人であれば多くの方が経験的に感じていることでしょう。しかし、思春期の若者に対してこの関係を科学的に、しかも「原因と結果」のレベルで証明した研究は、実はこれまでほとんどありませんでした。

そんな中、米国シンシナティ小児病院医療センターの研究チームが、14歳から17歳の健康な若者50名を対象に、睡眠時間を意図的にコントロールする実験を行いました(Baum et al., 2014)。

たった5日間の睡眠不足で何が変わるのか

この研究では、参加者全員が2つの条件を体験しました。ひとつは「1日6.5時間の睡眠を5日間続ける条件」(実際の睡眠時間は平均約6.3時間)、もうひとつは「1日10時間ベッドに入れる条件」(実際の睡眠時間は平均約8.8時間)です。すべて自宅で行われ、腕時計型のセンサーで睡眠をきちんと記録しました。

その結果、6.5時間睡眠の条件では、十分に寝た条件と比べて以下のような変化が確認されました。

不安や緊張感が増した。怒りっぽさやイライラが増した。疲労感が強まった。頭がぼんやりする感覚が増した。逆に、やる気や活力は下がった。そして特に注目すべき点として、感情のコントロールが難しくなったこと、小さなきっかけで感情が爆発しやすくなったことが、本人だけでなく保護者からも報告されたのです。

イライラや怒りっぽさは「性格」ではなく「睡眠」のせいかもしれない

ここで重要なのは、この研究が「実験」であるという点です。単に「睡眠が短い子はイライラしやすい傾向がある」という観察にとどまらず、「睡眠を短くしたら実際にイライラが増えた」という因果関係を示しています。

しかも、6.3時間という睡眠時間は極端に短いわけではなく、実際に多くの中高生が平日に経験している睡眠時間とほぼ同じです。つまり、「うちの子が最近怒りっぽい」「ちょっとしたことで機嫌が悪くなる」といった家庭内の悩みの背景に、日常的な睡眠不足があるかもしれないということです。

また、この研究では、年齢や性別、人種による結果の違いは見られませんでした。睡眠不足による気分への影響は、特定のタイプのお子さんに限った話ではなく、どのお子さんにも起こりうるものと考えられます。

睡眠不足と不登校・抑うつの関係を考える

お子さんの気分の浮き沈みが続くと、保護者として心配になるのは「不登校につながらないだろうか」「抑うつ状態になっていないだろうか」ということではないでしょうか。

学校生活への影響──不登校の入り口になることも

睡眠不足によってイライラや感情の爆発が増えれば、友人関係でのトラブルが起きやすくなったり、先生とぶつかりやすくなったりすることは容易に想像できます。学校で嫌なことが増えれば、当然「学校に行きたくない」という気持ちが芽生えやすくなります。

不登校の原因はさまざまですが、その入り口のひとつとして「睡眠不足による感情の不安定さ」が関わっている可能性は十分にあります。

さらに、平日の睡眠不足が重なると朝起きるのがますますつらくなり、遅刻が増え、そこから欠席へとつながっていくケースも少なくありません。「怠けている」「やる気がない」と見えるお子さんの行動の根っこに、慢性的な睡眠不足が潜んでいることがあるのです。

抑うつとの関連──今のうちに気づくことの大切さ

興味深いことに、先ほどの研究では5日間の睡眠制限では「抑うつ症状」そのものには明確な変化が見られませんでした。しかし、これは安心材料とは言い切れません。不安の増加、イライラ、疲労感、やる気の低下、感情のコントロール困難――これらはすべて、抑うつの「手前の段階」に現れやすい症状でもあるからです。

思春期は、心の病気が生涯で初めて現れやすい時期でもあります。短期間の睡眠不足ですでにこれだけの気分の変化が生じるのであれば、これが何か月、何年と続いた場合に、より深刻な心の問題につながるリスクは否定できません。

だからこそ、「まだ大丈夫」と思える今のうちに、お子さんの睡眠の状態に目を向けることが大切なのです。

睡眠不足は「心の問題」だけでは終わらない

なお、睡眠不足の影響は気分やメンタルヘルスだけにとどまりません。別の大規模な研究では、子どもや思春期の若者において睡眠時間が短いことと肥満のリスクが高まることとの間に関連があることも報告されています(Cappuccio et al., 2008)。つまり、十分な睡眠は心だけでなく体の健康を守るうえでも大切な土台だと言えます。

家庭でできること──睡眠について子どもと話してみよう

研究の結果を知ると、「じゃあ何をすればいいの?」と思うのは自然なことです。ここでは、家庭で取り組めることをいくつかご紹介します。

まずはお子さんの「睡眠の実態」を把握する

最初のステップは、お子さんが実際にどのくらい寝ているかを知ることです。「何時に布団に入っているか」と「何時に実際に眠りについているか」は違います。スマートフォンを布団の中で使っていたり、動画を見ていたりして、実際の入眠時刻はかなり遅いということも珍しくありません。

頭ごなしに「スマホを取り上げる」のではなく、まずは「最近、夜何時くらいに眠りにつけてる?」と穏やかに聞いてみるところから始めてみましょう。お子さん自身も、自分の睡眠時間を正確には把握できていないことが多いものです。

睡眠の大切さを「教える」のではなく「一緒に考える」

思春期のお子さんに対して「もっと早く寝なさい」と指示しても、なかなかうまくいかないことは保護者の方が一番よくご存知でしょう。むしろ効果的なのは、「睡眠が足りないと気分に影響するらしいよ」「最近イライラしやすいのは、もしかしたら睡眠と関係あるかもしれないね」と、情報を共有する形で対話を始めることです。

先ほどご紹介した研究のように、「たった5日間の睡眠不足で怒りっぽさが増えた」という具体的な事実は、お子さんにとっても説得力があるかもしれません。「自分のイライラには理由があるのかもしれない」と気づくことは、自分自身をコントロールする第一歩にもなります。

生活リズムを整えるためのヒント

睡眠を改善するために、家庭で意識できることはいくつかあります。まず、一般的にスマートフォンやタブレットなどの画面から出る光は、眠気を妨げる作用があると言われています。寝る前のスマートフォンの使用を少しずつ減らすことを意識してみるとよいかもしれません。

また、平日と休日の起床時間の差をなるべく小さくすることも大切です。休日に大幅に寝だめをすると、かえって月曜日の朝がつらくなり、体内時計のリズムが乱れやすくなると一般的に言われています。

そして何より、「早く寝なさい」と言うだけでなく、家庭全体で夜の過ごし方を見直してみることが有効です。リビングの照明を少し落とす、夜遅くまでテレビをつけないなど、家族みんなで取り組めることから始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ──睡眠は、お子さんの心を守る大切な土台

この記事でお伝えしたかったことを振り返ります。

思春期のお子さんの気分の浮き沈みやイライラの背景には、日常的な睡眠不足が関わっている可能性があります。米国の研究では、1日約6時間という多くの中高生が経験する程度の睡眠時間でも、わずか5日間で不安やイライラが増し、感情のコントロールが難しくなることが科学的に示されました。

こうした気分の変化は、友人関係のトラブルや学校生活への支障、さらには不登校のきっかけにもなりかねません。そして、短期的な気分の乱れが長期的に続けば、より深刻なメンタルヘルスの問題につながるリスクも否定できません。

大切なのは、「この年頃だから仕方ない」で終わらせず、お子さんの睡眠の状態に目を向けてみることです。そして、一方的に「もっと寝なさい」と伝えるのではなく、睡眠と気分の関係についてお子さんと一緒に考え、対話する時間を持つことが、お子さんの心を守る第一歩になります。

十分な睡眠は、心と体の両方を支える土台です。今日の夜、「最近ちゃんと眠れてる?」と、お子さんにそっと声をかけてみませんか。

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参考文献
1)Baum KT, Desai A, Field J, Miller LE, Rausch J, Beebe DW. Sleep restriction worsens mood and emotion regulation in adolescents. J Child Psychol Psychiatry. 2014;55(2):180-190.
2)Cappuccio FP, Taggart FM, Kandala NB, et al. Meta-analysis of short sleep duration and obesity in children and adults. Sleep. 2008;31(5):619-626.