寝る前のスマホ、本当に「ちょっとだけ」で済んでいますか?

子どものスクリーンタイムと睡眠の深い関係

「寝る前のスマホは良くない」と頭ではわかっていても、気づけば布団の中でSNSをチェックしている。大人ですらそうなのですから、子どもにとってはなおさらです。宿題の調べもの、友達とのメッセージ、動画視聴。スマートフォンは子どもの生活に深く入り込み、寝室という最もプライベートな空間にまで存在感を示しています。

「うちの子、最近なんだか眠そう」「朝なかなか起きられない」。そんな悩みを抱えているなら、一度お子さんの寝室を見渡してみてください。枕元にスマホが置かれていませんか? 部屋にテレビはありませんか? 実は、寝室にどんなスクリーンがあるかによって、子どもの睡眠は大きく左右されることが、2,000人以上の子どもを対象にした研究で明らかになっています。

この記事では、ハーバード大学公衆衛生大学院やカリフォルニア大学バークレー校などの研究チームが発表した大規模調査の結果をもとに、スクリーンが子どもの睡眠に与える影響をわかりやすく解説します。「なんとなく良くない」という漠然とした認識を、具体的な数字と科学的な根拠で裏づけることで、読み終えたその日の夜から、親子で「ちょっとだけ」意識を変えるきっかけになれば幸いです。

スマホが枕元にあるだけで、子どもの睡眠は約20分短くなる

2,048人の子どもを対象にした大規模調査が示した事実

2015年に学術誌『Pediatrics』に発表された研究では、アメリカ・マサチューセッツ州の公立学校に通う小学4年生(約9歳)と中学1年生(約12歳)、合わせて2,048人を対象に、寝室のスクリーン環境と睡眠の関係が調べられました(Falbe et al., 2015)。対象となった子どもたちの背景は多様で、都市部の公立学校に通うさまざまな家庭環境の子どもが含まれています。

研究チームは子どもたちに、スマートフォンなどの小型デバイスのそばで寝ているかどうか、寝室にテレビがあるかどうか、普段のスクリーン使用時間などを尋ね、平日の睡眠時間や「睡眠が足りない」と感じる頻度との関連を分析しました。性別や学年、身体活動量などの影響を取り除いた上での結果です。

「使っていなくても」そばにあるだけで影響がある

結果は驚くべきものでした。スマホなどの小型スクリーンのそばで寝ている子どもは、そうでない子どもと比べて、平日の睡眠時間が平均で約21分も短かったのです。また、寝室にテレビがある子どもは、ない子どもより約18分睡眠が短いことがわかりました。注目すべきは、これは「スマホを使っている時間」ではなく、「スマホのそばで寝ているかどうか」という環境の問題だということです。つまり、枕元にスマホを置いて寝るという行為そのものが、睡眠時間の短縮と結びついているのです。

たった20分と侮れない、積み重なる睡眠負債

「たった20分」と思われるかもしれません。しかし、これは1日あたりの差です。平日5日間で計算すると、約1時間40分。1か月では約7時間もの差になります。成長期の子どもにとって、この積み重ねは決して小さくありません。

睡眠不足は集中力の低下や記憶の定着を妨げるだけでなく、肥満のリスク上昇やメンタルヘルスの不調とも関連することが、数多くの研究で報告されています。「塾に通わせているのに成績が伸びない」「最近イライラしやすい」といった悩みの裏に、実は睡眠不足が隠れている可能性もあるのです。勉強や習い事に時間とお金を投資しているご家庭ほど、その土台となる睡眠が知らないうちに削られていないか、あらためて確認する価値があります。

スマホとテレビでは「睡眠への影響の仕方」が違う

テレビは電源を切れば終わり、でもスマホは違う

この研究で特に注目すべきなのは、スマホとテレビでは睡眠への影響の仕組みが異なるという発見です。寝室にテレビがある子どもは睡眠時間こそ短くなっていましたが、「寝足りない」と感じるかどうかについては、テレビの存在だけでは明確な差が見られませんでした。

一方、スマホなどの小型スクリーンのそばで寝ている子どもは、睡眠時間が短いだけでなく、睡眠不足を感じる割合が約1.4倍も高くなっていました。さらに興味深いのは、睡眠時間の長さを統計的にそろえた上でも、この睡眠不足感の差が残っていたことです。つまり、同じ時間寝ていても、スマホが近くにあるだけで睡眠の質が損なわれている可能性があるのです。

通知音が睡眠を「分断」する

なぜスマホはテレビと違う影響を与えるのでしょうか。研究チームは、スマホ特有の要因として「通知」の存在を指摘しています。スマホは枕元に置いてあるだけで、友達からのメッセージやアプリの通知音が鳴ることがあります。

深い眠りに入りかけた頃に通知音で目が覚める。たとえ本人がそれを翌朝覚えていなくても、睡眠の質は確実に下がっています。完全に目が覚めなくても、眠りが浅くなることが繰り返されれば、体を回復させるための深い睡眠が妨げられてしまうのです。

画面の光が体内時計を狂わせる

通知だけではありません。スマホは顔のすぐ近くで使うため、画面から出る光が体内時計を狂わせやすいという問題もあります。私たちの脳は、夜になると「メラトニン」という眠りを促すホルモンを分泌します。しかし、明るい光を浴びるとこの分泌が遅れてしまいます。テレビの光は画面との距離があるぶん影響が弱まりますが、スマホは至近距離で目に光を浴びることになります。寝る直前までスマホを見ていると、脳が「まだ昼間だ」と勘違いし、なかなか眠気が訪れなくなるのです。

「スクリーン使用時間」が長いほど、就寝時刻はどんどん遅くなる

ゲームの影響はテレビ視聴の約2.5倍

この研究では、寝室にスクリーンがあるかどうかだけでなく、日中のスクリーン使用時間と睡眠の関係も調べています。テレビやDVDの視聴時間が1日1時間増えるごとに、就寝時刻は約4分遅くなっていました。そして、ビデオゲームやパソコンゲームでは、1日1時間あたり約10分も就寝時刻が遅くなっていたのです。

ゲームの影響がテレビ視聴より大きい背景には、「受動的に見る」テレビと、「能動的に操作する」ゲームの違いがあると考えられます。ゲームは脳を興奮状態にさせやすく、「あともう1回」「次のステージまで」と、なかなかやめられない仕組みが組み込まれています。特にオンラインゲームでは友達と一緒にプレイしていることも多く、「自分だけ先に抜けられない」というプレッシャーも加わります。その興奮が冷めないまま布団に入っても、すぐには眠れません。

起きる時間は変わらない、だから睡眠が削られる

注目すべきポイントがもう一つあります。スクリーンの影響で遅くなっていたのは「就寝時刻」であり、「起床時刻」には変化がなかったのです。学校がある平日は、どんなに遅く寝ても朝は同じ時間に起きなければなりません。つまり、夜のスクリーン使用が増えた分だけ、睡眠時間がそのまま削られるという構造です。

この研究では、中学1年生の平均睡眠時間は約8.8時間、小学4年生は約9.8時間でした。中学生になるとスマホの所持率も上がり、約65%の子どもがスマホのそばで寝ていたのに対し、小学4年生では約46%でした。年齢が上がるにつれてスクリーンとの接触が増え、それに伴って睡眠時間が短くなっていく傾向が見て取れます。

運動が「緩衝材」になる可能性

一方で、明るい材料もあります。この研究では、日頃から体を動かす習慣がある子どもは、ゲームによる睡眠への悪影響が和らぐ傾向が見られました。運動が睡眠の質を高めることは他の研究でも報告されており、スクリーンタイムの影響を完全に打ち消すわけではないにしても、日中の身体活動が夜の睡眠を守る「緩衝材」として機能する可能性があります。放課後は塾や習い事で忙しいというご家庭も多いかもしれませんが、通学時に少し歩く距離を増やす、休日に家族で体を動かすなど、工夫次第で身体活動の時間を確保する方法はあります。スクリーン管理と合わせて、体を動かす時間を意識することも、睡眠を守るための有効な一手です。

今夜からできる「寝室スクリーンフリー」のすすめ

完璧を目指さなくていい、まずは「置き場所」を変えるだけ

ここまで読んで、「うちの子、まさにスマホを枕元に置いて寝ている」と感じた方も多いのではないでしょうか。でも、いきなり「スマホ禁止」と宣言しても、特に思春期のお子さんには逆効果になりかねません。

まずは小さな一歩から始めてみてください。就寝の30分前になったら、スマホをリビングの充電ステーションに置く。それだけで、通知音による睡眠の中断を防ぎ、寝る前のだらだらスマホも自然と減らすことができます。「禁止」ではなく「置き場所を変える」という発想なら、親子の摩擦も少なく済みます。目覚まし時計代わりにスマホを使っているお子さんも多いですが、それなら安価な目覚まし時計を一つ買ってあげるだけで問題は解決します。

親自身が手本を見せることが最大の説得力

もう一つ大切なのは、保護者自身が実践することです。「スマホを寝室に持ち込まないで」と言いながら、自分は枕元でニュースをチェックしていては説得力がありません。子どもは親の言葉よりも行動を見ています。家族みんなで「寝室はスクリーンフリーゾーンにしよう」と決めて、リビングに充電スペースを作る。親が率先して実行する姿を見せることが、子どもにとって最も効果的なメッセージになります。

この研究が示しているのは、スマホやテレビが「悪」だということではありません。スクリーンとの付き合い方、特に「寝室での付き合い方」を少し見直すだけで、子どもの睡眠は守れるということです。難しいルール作りは必要ありません。今夜、お子さんの枕元を確認するところから始めてみませんか。

まとめ:「たかがスマホ」が子どもの睡眠と健康を左右する

この記事では、2,048人の子どもを対象にした研究をもとに、寝室のスクリーン環境が睡眠に与える影響を見てきました。

ポイントを振り返ると、スマホなどの小型スクリーンのそばで寝ると睡眠時間が約21分短くなること、スマホはテレビと違い睡眠の質そのものにも悪影響を及ぼす可能性があること、ゲームの就寝時刻への影響はテレビ視聴の約2.5倍であること、そして就寝時刻が遅くなっても起床時刻は変わらないため睡眠がそのまま削られること。これらはすべて、大規模な調査データに基づいた知見です。

なお、この研究は2012年から2013年に調査が行われた横断研究であり、「スクリーンがあるから睡眠が短くなった」という因果関係を断言することはできません。また、子ども自身の回答に基づいているため、実際の睡眠時間とは多少のずれがある可能性もあります。しかし、2,000人以上の子どもを対象とした大規模な調査であり、多くの要因を考慮した上での結果ですので、寝室のスクリーン環境を見直すための十分な根拠になるでしょう。むしろ、研究当時よりもスマートフォンの普及率が格段に高まっている現在、この知見の重要性はさらに増しているといえます。

子どもの学力向上や健やかな成長のために、塾や習い事にお金や時間を投資するご家庭は多いでしょう。しかし、そのすべての土台となるのが毎日の睡眠です。「寝る前のスマホ」という日常の何気ない習慣が、お子さんの可能性を静かに削っているとしたら、今日この瞬間から見直す価値は十分にあるのではないでしょうか。今夜の就寝前、まずはスマホの「置き場所」を変えることから始めてみてください。その小さな一歩が、お子さんの明日の朝を変えるかもしれません。

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参考文献
1)Falbe J, Davison KK, Franckle RL, et al. Sleep Duration, Restfulness, and Screens in the Sleep Environment. Pediatrics. 2015;135(2):e367-e375. doi:10.1542/peds.2014-2306