【睡眠と遺伝の関係?】必要睡眠時間とは?それは何によって決まる?

「睡眠時間を減らしたいけど、7時間は最低でも寝ないと頭が回らないんだよな~」
そんなこと考えたことがある方も多いと思います。

後々説明しますが、ヒトには「必要睡眠量」という、生活するうえで必要最低限の睡眠時間の量というものがあります。これには個人差がありますが、その個人差とはどのように決まるのでしょうか。遺伝と環境という違った側面からみて、ヒントを得ましょう。

睡眠は遺伝によって決まる?

 必要な睡眠時間は人それぞれです。その他にも人それぞれの睡眠の特性としてあげられるものが「概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれる体内時計についてです。これらは実は遺伝の影響を受けることが研究によって明らかになってきています。
サーカディアンリズムについては今回は置いておき、睡眠時間と遺伝の関係について取り上げたいと思います。

必要睡眠量と日常生活

 「必要睡眠量」という言葉をご存知でしょうか。これは生きていくうえでその人自身が必要としている睡眠の量のことをいいます(「これくらい寝たい!」という主観的なものではなく、体温調節や代謝機能など、生命活動を維持するために最低限に必要な休息としての睡眠量)。年齢によっての変動は多少ありますが、極端にこの必要睡眠量が変わることはありません。

生活していると、睡眠の量というのは大きく変動します。休みの日はいつもよりも多い時間眠り、大事な予定が朝早くにある日は、アラームを入念にセットして睡眠時間が短くなる。このようなことはきっと誰しもが経験していることだと思います。つまりは必要睡眠量を確保できていない日がある、もしくは必要以上に睡眠を取っている日があるということになります。

必要睡眠量と遺伝

必要睡眠量はどのようにして決定するのかというと、「遺伝」と「環境」の2点が挙げられます。上記にもあるように、環境がどうか(その時の状況がどうか)によって睡眠時間が増減します。必要な睡眠時間を決定する遺伝子が見つかれば様々なことが明らかにはなりますが、それにはとても精密な機器や実験時間を要するため、比較的困難と言えます。しかし「遺伝」と「環境」がどれくらいの度合いで影響しているのかということがわかれば、その結果からヒントを得ることができます。

 睡眠時間は遺伝と環境のバランスによって決まります。これはどちらか片方の影響がより強いのが通常であり、その割合は疾患や生体機能によって大きく異なります。睡眠時間というたったそれだけの情報からこの遺伝と環境のバランスを明らかにしようとするのはとても難しい内容です。しかしこのバランスを「双生児研究」と呼ばれる、一卵性双生児(俗に言う”双子”)を対象とした研究法を用いることでバランスを見ることが可能です。どういうことかというと、一卵性双生児は遺伝子配列が同じなので、遺伝的な影響が非常に強い場合、育った環境が違っていても、必要睡眠量は近しい値になると考えられるということです。

双生児研究の結果

 このような遺伝学的手法を利用し、様々な国と人種を対象に睡眠時間が遺伝と環境のどちらの影響度を大きく受けているのかを研究した結果によると、大部分の調査で遺伝が睡眠時間に対する影響が比較的に大きいという結果が確認されました。

成人の睡眠時間の遺伝率は30%~50%と推定されています。しかし乳幼児の睡眠時間の遺伝率は60%-70%と高いため、成長に連れての環境要因も睡眠時間に作用するということが考えられます。身長などは遺伝率が80%近いというのに比べると、睡眠時間は30%-50%となりますので、比べると睡眠時間の遺伝率は低めですが、睡眠時間の長さには遺伝的影響が関与しているということが明らかになりました。

環境要因が与える影響

環境の要因が遺伝子機能を後天的に変えてしまうということもあります。例を挙げると、環境ストレスにより睡眠時間に関わるなにかが変化し(たんぱく質を合成する機能など)必要睡眠時間が変わってくる可能性もあります。まだ睡眠研究は盛んにおこなわれている中で完全には明らかにはなっていませんが、多少なりともこの必要睡眠時間には「遺伝」の要素が絡んでいます。

まとめ

・必要睡眠時間は遺伝の影響を受けている
・成熟するにつれて、必要睡眠時間は環境の影響もでてくる
・どちらの影響が多いにしても、こ の測定は非常に大変

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