「昨日全然寝てないんだよな。」
いわゆる寝不足、そんな日に限っていつもしないようなミスをしてしまったり、普段何とも思わないことに対して苛立ちを覚えてしまうことはないでしょうか?

それは、睡眠不足が前頭葉と呼ばれる脳の部位にとても悪影響を及ぼしている証拠です。実際に睡眠が不足するとどのように脳に影響を及ぼしてしまうのでしょうか?
前頭葉(前頭連合野)
前頭葉はサルからヒトに進化する過程で発達した、歴史からすると新しい大脳皮質です。ヒトはその割合が非常に高いことから、進化の過程で得た能力はこの前頭葉が担っている部分が大きいことが考えられます。また、前頭葉のうちの前頭連合野と呼ばれる部位も非常に大きくその役割は、運動(手や指を動かすような細かい動き)や発語(言葉を話す)などがあります。

短期記憶(ワーキングメモリ)
この前頭葉にはワーキングメモリと呼ばれるものがあります。
「さっき話してたことなんだけどさ…」
「そういえばこれをやろうとしてたんだ。」
日常の中でこのようなことはありますよね。必要なことを覚えて、その用が済めば次第に忘れるようになっています。これはワーキングメモリという前頭葉の機能が働いているということになります。
この機能は、ただ情報を保存するだけでなく、それに合った適切な行動をするような働きもあります。またこれは注意の維持にも関係があると言われています。
前頭連合野の機能とは
上記にも述べていますが、前頭連合野には多くの機能が備わっています。
- 注意
- 集中
- 短期記憶
- 記憶想起
- 認知
- 実行
- 判断
- 計画
- 情動
- 動機付け
など、他にもヒトに必要な機能を担っている部位で、そのほとんどが重要な働きを担っています。
睡眠不足になるとまず初めにダメージを受けるのが、この前頭連合野になります。感情が上手くコントロールできなくなったり、物覚えが悪く、忘れっぽくなってしまうことがでてきます。
その他にも意欲や協調性の低下などが考えられます。睡眠不足でイライラしてしまうのは、この前頭連合野がダメージを受けてしまい、感情が上手くコントロールできていない証拠ということです。

子供と高齢者の前頭連合野への影響
子供と高齢者は前頭連合野のはたらきがあまり高くありません。だから影響がないかというとその逆で、子供や高齢者の睡眠不足は、この前頭連合野に顕著に影響を及ぼしてしまいます。
1週間にわたり子供の睡眠時間を6.5時間にした結果、それまで睡眠や情動に問題のなかった子供の成績は低下し、授業中の注意維持の悪化がすぐに現れたという研究結果が報告されています。

睡眠不足はこのように注意機能に何らかの形で影響を及ぼしていると考えられているので、子供の睡眠はなおさら大切になってきます。無論。大人の睡眠も同様に、すぐに感情的になったり、忘れ物をしないようにするためにも、睡眠不足は解決しなければいけない問題です。
まとめ
・睡眠不足は脳に大きな影響を及ぼす。
・睡眠不足が与えるダメージは、感情的な部分にも影響が出る。
・学習機能の向上や集中力・注意力の向上にも睡眠は大切。
※参考文献:眠りで育つ子どもの力(著:白川修一郎)